デザインに関わる人はデザインという言葉をデザインし直してみよう!
今回「おすそわけ」するのは「デザイン」について。
街なか、職場、学校、駅や公共施設に家の中まで、デザインから逃れられないくらいどこもかしこもデザインで溢れている。
ちょっとした会話でも「あのデザインイケてるよね!?」など
日頃何気なく使っているデザインという言葉。
デザイナーのはしくれである僕がその言葉を考える時、必ず一人の人物が頭をよぎる。
ポール・ランド
彼はグラフィックデザイナーの巨匠である。
グラフィックデザインを学んできた人なら必ず一度は目にしている、IBMのロゴマークをデザインした人だ。コーポレートアイデンティティ、いわゆるCIデザインの代表作だ。
そんな彼の著書「ポール・ランド、デザインの授業」を最近読み直してみた。
仕事柄当たり前に使っている言葉だが、デザインという言葉をデザインし直してみようと思いブログに書いてみた。
ポール・ランドのデザイン哲学
本書はポール・ランドが1995年にアリゾナ州立大学で行ったワークショップの議事録を中心にまとめたもので、「デザインするとはなにか?」を生徒との対話形式で展開していく。
理論と実践を繰り返し、多くの経験から紡ぎ出された彼の言葉からは
「表面的なカタチだけに囚われたデザイン」が無意味なものだと気づかさせてくれる。
厳しさの中にもユーモアと情熱ある言葉から、デザインするプロセスを楽しむ、カタチを創りだす醍醐味が伝わってくる一冊である。
よく居酒屋なんかで美大生が顔を真っ赤にしながら
「デザインとアートの違いって何よ?」みたい話を、涙目で盛り上がってるの見かけるが、、、(だいたい最後は支離滅裂な不毛な討論会になってしまう、、、僕らがそうだった)
その答えを導き出すヒントをポール・ランドはこの本の中で惜しみなく出し切っている。
誰よりもデザインを愛し、デザインの力を信じていた人
「デザインとは関係である。形と中身の関係だ。」
「デザインはすべての芸術の基盤なんだよ」
「デザインは古びない。デザインは普遍的であり時を超えるんだよ」 など
多くの作品を生み出した実践的なデザイナーとしての実績もあるが、本書はデザインナーがデザインするときに肝に命じておくべきこと、「デザインするとはなにか?」といった彼のデザイン哲学にほとんどページを割いている。
実際に長い間イエール大学で教鞭をとっていた時期もあり、ポール・ランドの教育者的な一面が色濃くあらわれている。
日頃から何事もデザインと結びつけて生きていたデザインオタクだったんだろう。
それだけ彼は誰よりも「デザインを愛し、デザインの力を信じていた人」だったことがうかがえる。
デザインとは?
とかくありがちだが、学生の頃はカタチにばかり目が、手が動いていた。当時この本に出会ってたらと思う。
今でも忙しくて時間のない時、仕事のゴールであるクライアントの求めるデザインを「カタチ」だけで解決しようとしてしまう。
そんな時「デザインとは関係である。形と中身の関係だ」を思い出すようにしている。
デザインとアートの違い
持論だが、簡単にその違いをみてみると
「デザインは相手(クライアント)がいる」
「アートは相手がいない」
んん、、、難しい。一言で定義するのは無理があるが、
「アートはアーティスト自身の情熱を爆発させたモノ」
それに熱烈なファンが現れるか否かでその価値が問われる。
「芸術は爆発だ!」
メラメラと猛烈に燃えるもの、沸々と静かに燃えるもの、いろいろあるが、アートはエネルギーなんだと思う。
一方「デザインは誰かの問題を解決すること」
都市から空間のいたるところで、生物が使う道具や情報を気持ちよく使える、伝わるように整える作業。
「ワシはこの形が好きなんじゃい!」と押し付けても、使い手が受け入れなければ、いくら情熱がこもっていようが、つくられたものは必要とされない。
デザインには、その形になる理由がある
その理由をもとに設計することがデザインだと思う。
よくお客さんとデザイン的な話になると、どうしても外見的な装飾のことに話しが向かうことが多々ある。
designとは設計すること
「design」という言葉を辞書やwikiで調べてもらうとわかる。
ふと思いついたのでラテン語で調べてみた。
デザインの語源はデッサン(dessin)であり、「計画を記号に表す」という意味のラテン語「designare」である。(なんて発音するんだ???)
つまりデザインとは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現するなのだ。
一言で「設計」だ。
さいごに
なんか脱線してしまったが、ポール・ランドが僕に教えてくれたことは
問題を解決しようとする時にもっとも大事なことは「見る」こと。
ただ見るのではなく、「問題の中身が理解できるまで見る」こと。
やっとそこから手を動かすことが始まる。
見ること、問題や対象を知ることからが「デザインすること」と僕は受け止めた。
いろんなことに当てはまる教えである。デザインだけでなく、、、
一気に読めてしまうほど薄い本だが、内容はメチャメチャ濃いものとなっている。
デザインに関わる人は是非読んで頂きたい良書である。
デザイン業界の重鎮、「ポール・ランド、デザインの授業」
受けてみてはどうだろう。
余談だが、我が家は長男が幼い時にポール・ランドの絵本をプレゼントした。
もちろん次男もお気に入り。しかも谷川俊太郎・訳という最強タッグ。
ポール・ランドの可愛らしくも洗練されたグラフィックと、アン・ランドの言葉を谷川俊太郎の独創的かつ感覚的な言葉で訳されている。
本当に絵から音が飛び出してきそうな楽しい絵本である。
読んでいただいた方へ
ありがとうございました。
Kai Hajime
ポール・ランド、デザインの授業 | ||||
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- 発売日: 2007/05
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